教えて!実験動物医学専門医のこと

私たちは実験動物を専門とした獣医師です

新しい薬の開発では、人に使う前にその安全性を確かめるための動物実験が必要です。病気の研究は、人間の病気と同じような症状を引き起こした動物を使って行われます。また、医学や獣医学などの分野では、教育のために動物が使われています。

医療や科学技術の進歩には、動物実験からの知識や経験が欠かせません。しかし一方で、動物の犠牲を伴う実験には反対、という方もいるかもしれません。

私たち実験動物医学専門医は、研究や教育のために使われる動物(実験動物)ができるだけ苦痛を感じず、不必要な実験が行われないように対応するスペシャリストです。

実験動物医学とは

実験動物医学は、実験動物のケアや福祉の向上を主な目的とする、獣医学の中でも特殊な分野です。この分野の専門家として、実験動物医学専門医には広い知識が求められます。

実験動物医学では、実験動物の病気や治療に関する学問領域だけでなく、ヒトの病気に似た症状を持つモデル動物を作るための遺伝学や生殖工学、飼育環境や実験室のデザイン、実験動物の倫理的取り扱いに関する法律や規範、さらには動物実験に携わる人々の労働安全衛生についても取り扱います。実験の計画や成果の評価方法、新しい実験手法に関する知識も必要です。動物の痛みや苦しみを軽減するための麻酔や鎮痛に関する知識や技術は特に重要です。

私たちは、常に新しい知識をアップデートしながら、科学的な研究が最も高い倫理基準を満たして行われるように努めています。

実験動物の「動物福祉」を守るために

動物福祉とは、「動物の身体と精神の健全性」のことを意味します。多くの実験動物医学専門医は、医薬品や医療機器メーカー、安全性試験を行う企業、大学などで働いています。実験動物が痛みや苦しみを感じず、安全に暮らせるように専門的な役割を果たしています。

  • 獣医師として、実験動物に怪我や異変がある時に診察や治療、検査などを行います。
  • 動物たちが安全な環境で健康に暮らせるよう、飼育方法や施設の設計、メンテナンスにも関わります。
  • 動物実験を行う際には、実験の必要性や、動物福祉に配慮した方法を検討するために計画書の提出が求められます。実験動物医学専門医は、研究者の計画書作成のサポートや審査、実験の監督を担当します。
  • 実験動物の特徴や習性を理解し、科学的に正確な実験をサポートするために、研究者に知識や技術のアドバイスをします。
  • 研究者が動物福祉への理解を深められるように教育活動を行ったり、実験動物医学に関する海外のガイドラインの翻訳などを通じて最新の知識と技術を共有しています。

実験動物医学専門医になるには?

日本実験動物医学専門医協会(JCLAM)では、実験動物医学専門医の認定を行っています。1999年からこれまでに約200名が専門医として認定されています。

実験動物医学専門医になるためには、まず日本の獣医師免許を取得する必要があります。さらに、実験動物医学に関する仕事に1年以上従事し、研究発表やセミナー参加などの一定の活動をすることで、認定試験の受験資格を得ることができます。認定試験(筆記試験)に合格すると、実験動物医学専門医の資格を取得できます。

詳しくはこちらのページをご覧ください。

実験動物医学専門医を目指す方へ

私たちの仕事は一般的にはあまり知られていないかもしれません。でもやりがいはひとしおです。実験動物医学専門医は、獣医師として動物たちに最良のケアを提供しながら、科学の進歩に貢献することができます。研究者と協力して実験動物への負担を最小限に抑えるような実験計画を練り、その結果が新しい発見に繋がることは、私たちの大きな喜びです。

近年、動物福祉への関心が高まっている中、研究と動物の福祉のバランスを最も理解して実践しているのが実験動物医学専門医です。専門家としての誇りを持ちながら、新しい知識を積極的に取り入れ、動物に寄り添った仕事を続けていくことで、安心して動物実験を任せてもらえる存在になれるよう、一緒に未来を拓いていく仲間を歓迎しています。